発達障害(自閉スペクトラム症・ADHD)
発達障害とは
発達障害は、脳の働き方の違いにより、物事のとらえかたや行動のパターンに違いがあり、そのために日常生活に支障のある状態です。発達障害は特性によって、自閉スペクトラム症(ASD) 、 ADHD(注意欠如・多動性) 、学習障害(LD)、協調運動症、チック症、吃音などに分類されますが、大人の発達障害は自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD(注意欠如・多動性)が中心です。
専門家による診断は、ご自身の特性や抱えている悩みの理由を知ることで、生きづらさを減らすためにできることを考える大きな一歩となります。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉症スペクトラム症とは
自閉症スペクトラム症は、コミュニケーション・対人関係の困難とともに、強いこだわり・限られた興味を持つという特徴がある発達障害です。「スペクトラム」とは、「連続している」という意味で、ASDには、自閉症・高機能自閉症・アスペルガー症候群などが含まれます。
自閉症スペクトラム症の困りごと
●コミュニケーション・対人関係
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相手の立場に立って考えることが苦手
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自分の気持ちを伝えることが難しい
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言葉のニュアンスや視線、表情、身振り手振りから相手の気持ちをくみ取ることが難しい
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空気が読めないと思われる
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社交辞令や冗談が通じない
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興味のあることのみを一方的に話し続ける
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普通に話しているつもりなのに相手を不愉快にさせたり、怒らせてしまったりする
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「適当に」、「もう少し」、「多めに」など、幅のある表現を受けての判断や対応が難しい など
●強いこだわり
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自分のルールやペースを維持することを優先したい
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臨機応変な対応が難しい
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好き嫌いが極端
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一つのことに集中しすぎて周囲がみえなくなる など
自閉症スペクトラム症の対処
自閉スペクトラム症を完治させるお薬はありません。患者様がお困りのことを解決できるように、特性を理解し、今後の対処法や、どのような支援が必要かを考えていきます。必要に応じて、症状に応じたお薬を用いる場合があります。
ADHD(注意欠如・多動性)
ADHDとは
ADHDは、注意し続けることができず作業にミスを生じやすい(不注意)、落ち着きがない・待つことができない(多動性・衝動性)などの特性がある発達障害です。注意と多動性・衝動性の両方がある場合と、どちらか一方が顕著に現れる場合があります。
ADHDの困りごと
●不注意
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集中し続けることが困難
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ミスが多い
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気が散りやすい
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物を忘れる・なくす
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約束や時間を守れない
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作業や課題の段取りが苦手
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計画的に物事を進められない など
●多動性・衝動性
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そわそわとして落ち着かない
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待つことが苦手
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感情のコントロールが苦手
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衝動的な感情・行動を抑えられない など
ADHDの対処
ADHDの特性による困りごとや生きづらさを軽減する方法として、以下のような対処法があります。ADHDの特性を理解し、うまくコントロールすることで、よりスムーズで快適な日常生活・社会生活を送ることができます。
●環境調整
苦手なことをカバーする工夫や得意なことを生かせる環境を検討します。
●ソーシャルスキルトレーニング(SST: Social Skills Training)
社会生活を営む上で必要なコミュニケーションのコツや人間関係の構築を円滑に行うために必要なスキル(挨拶、表情、相手の感情の理解、誤解が生じた際の対応、など)を具体的なロールプレイを通して学んでいきます。
●薬物療法
環境調整などの対処を行ってもADHDの症状改善が乏しい場合は、お薬を用いることがあります。ADHDのお薬は、脳内神経伝達物質のバランスを調整し、不注意・多動性・衝動性の症状を緩和する効果があります。
「自分は発達障害かも?」と思っている方へ
発達障害かも?と感じている方は、「発達障害のセルフチェックをやってみたら、ほとんど当てはまった」 「発達障害について調べていたら、思い当たることが多かった」「(他者から)発達障害じゃない?と言われた」という方が多いのではないでしょうか。「自分は発達障害かも?」と思っていても、心療内科・精神科を受診するかどうか迷っている方も多いかと思います。もちろん、診断を受けるかどうかは患者様の自由ですが、もし、今、生きづらさを感じているようでしたら、専門家へ相談することを考えてみてください。診断によって、生きやすくなるヒントを得られるかもしれません。
今、困っていることが多い場合はご相談を
いつも人間関係がうまくいかない、仕事でミスを繰り返して怒られてばかりいる、など日常生活・社会生活で困っていることが多い場合は、うまくいかない理由がわかることで、自分の特性に合った適切な対処法を考えることができます。
二次障害の予防・治療
発達障害の特性による生きづらさや困りごとが大きなストレスとなって、うつ病、不安障害、睡眠障害などを引き起こしてしまうことがあります。これを発達障害の二次障害といいます。
発達障害がある方に二次障害が必ず起こるわけではありませんが、生きづらさや困りごとを放置したり、適切な対処法をとらずにストレスが蓄積した場合などに発症しやすい傾向があります。二次障害の発症や悪化を防ぐためにも、心療内科・精神科への受診は大切になります。